1985年9月19日に発生したメキシコ地震では、震源から300km離れたメキシコシティで長周期地震動による液状化現象が発生し、甚大な被害をもたらしました。液状化現象は、地震による強い揺れで地盤が液状化し、建物が沈んだり傾いたりする現象です。液状化への備えとして、液状化ハザードマップの活用が進められ、被害を防ぐための地盤改良等が重要視されています。
長周期地震動による液状化現象
1985年(昭和60年)9月19日 メキシコ地震
モーメントマグニチュード8.0のメキシコ地震が発生しました。
特に被害が大きかったのは震源から約300km離れた首都メキシコシティで、長周期地震動による液状化現象が発生し建物の倒壊など甚大な被害となりました。地震による死者は約10,000人、家屋の全半壊は約100,000棟に達しました。
なお、メキシコでは現地時間2017年の9月19日(日本時間9月20日)にも、メキシコ内陸を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しています。
長周期地震動とは
地震が起きると様々な周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。
このような地震動のことを長周期地震動といいます。
出典 気象庁ホームページ
液状化現象とは
液状化とは、地震が発生して地盤が強い衝撃を受けると、今まで互いに接して支えあっていた土の粒子がバラバラになり、地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象のことをいいます。液状化が発生すると、地盤から水が噴き出したり、また、それまで安定していた地盤が急に柔らかくなるため、その上に立っていた建物が沈んだり(傾いたり)、地中に埋まっていたマンホールや埋設管が浮かんできたり、地面全体が低い方へ流れ出すといった現象が発生します。
出典 国土交通省
液状化への対策
液状化現象では地盤沈下による建造物やインフラに大きな被害をもたらします。その対策の取り組みとして、液状化ハザードマップの整備があります。
液状化ハザードマップとは
液状化ハザードマップは、地域の液状化発生傾向や液状化による宅地の被害リスクを確認するだけでなく、事前の対策として何が必要か、何をすべきか等を共有できるリスクコミュニケーションを図るためのツールとしても活用することが可能です。
出典 内閣府防災情報のページ
国土交通省では、「リスクコミュニケーションを取るための液状化ハザードマップ作成の手引き」を公表し、液状化ハザードマップの作成を推進しています。
出典 国土交通省|盛土・宅地防災|液状化ハザードマップの活用方法
※「リスクコミュニケーション」とは消費者、事業者、行政担当者などの関係者の間で情報や意見をお互いに交換しようというものです。
出典 厚生労働省ホームページ
液状化ハザードマップの活用場面とその方法
いかなる地震が発生した場合にも、人命を最大限守り、社会経済を機能不全に陥らせないことが地震防災の目標であり、この目標を実現するための基本対策として、「防災力の向上対策」、「命を守る対策」、「生活と社会機能を維持する対策」が挙げられます。
宅地における液状化被害の軽減を目指す上でも、上記3つの対策が基本となり、この基本対策を推進するために液状化ハザードマップを活用したリスクコミュニケーションを行うことが重要となります。
出典 国土交通省|盛土・宅地防災|液状化ハザードマップの活用方法
地形区分に基づく液状化の発生傾向図
これまでの地震において発生した液状化被害を地形区分ごとに集計し、全国を対象におよそ250m四方のメッシュごとに液状化の発生傾向の強弱を5段階で表したもの
出典 国土地理院 重ねるハザードマップ
まとめにかえて
液状化現象による地盤沈下は、建造物やインフラに大きな被害をもたらします。液状化現象による被害を最小限に抑えるには、土の密度と強度を上げる地盤改良工事、建物の軽量化や重さのバランスを考えて設計する等があります。また液状化ハザードマップで地域の被害リスクを確認するとともに、関係者の間で情報やお互いに交換することの取り組みが行われています。液状化ハザードマップを活用したリスクコミュニケーションを行うことが重要となります。
「液状化現象」もし起きたらどうする? 事前の対策は?
能登半島地震でも大きな被害をもたらした「液状化現象」。 もし家が傾いてしまった場合の修復方法は? また、事前に備える方法は? 熊本地震で液状化の被害にあった住民と行政の、再発防止への取り組みも紹介します。
出典 NHK防災
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